遺言書作成サポート

ご家族を大切に想うシニアの皆さん、遺言を残す目的を考えてみましょう。また、遺言には三つの方式がありますが、その中の自筆証書遺言は2019年より作成しやすくなりました。

遺言を残す目的

遺言を残す方は10人1人、1割程度だと言われています。 遺言の目的を一言で言うと「自分の死後に遺言の内容をすみやかに実現すること」ですが、この一言だけでは「よし、遺言を作ろう」とは思えませんね。 以下のように考えてみると「そろそろ一度遺言を作っても良いかな」と思っていただければと思います。

残した遺産の分割は、有効な遺言による「指定分割」が優先されます。遺言がなければ、法定相続分をベースに相続人による「協議分割」になります。スムーズに合意ができれば良いことなのですが、さまざまな理由によって、協議が進まない難しい状況になることがあります。

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①円満な我が家に遺言は必要ない

ご自分が存在しない・口出しができない残された家族を想像し、もし少しでも不安があれば、自分の分身(意志)を残すことが遺言となります。

②遺言を残すほどの財産がない

法務省司法統計によると、家庭裁判所での遺産分割事件のうち約3割は相続財産1,000万円以下のもめ事、5,000万円以下のもめ事を合わせると8割近い割合になります。 相続税の基礎控除額について、以前は(5,000万円+法定相続人数x1,000万円)でしたが、今は(3,000万円+法定相続人数x600万円)に変わっています。相続人数が配偶者とお子さん2名の計3名の場合、以前は遺産総額が8,000万円まで相続税はかからなかったのですが、今は4,800万円です。要は相続税を納めるケースが増えたことも一因として相続トラブル・不安が増えているようです。

③遺言は縁起が悪い

アンケート結果等があるわけではありませんが、会社定年時や区切りの年齢に達したときに遺言を残した方々の生の声として、財産を残すために法律を学んだり、財産を整理したり、生前贈与を検討したり、人生を振り返ったり、また家族のことを考える時間を持つことによって「爽快感」や「達成感」を感じる方が多いそうです。 遺言書には財産分与の内容だけでなく家族への想い、願いや感謝の言葉などを残すこともできます。

④遺言を残したら財産が使えなくなる・処分できなくなる

遺言は被相続人の単独行為であり、遺言は死後に効力が発生します。 遺言の内容に抵触する生前の処分行為などは遺言を撤回したものとみなされます。 また遺言が複数あっても日付が古いものは無効なので、何度でも書き直すことができます。

⑤遺言内容が本当に実現されるのか

確かに実現されるかどうか見届けることはできません。 遺言の中で信頼できる第三者(相続人以外)を遺言執行者として指名したり、特定の相続人には負担付遺言にしたり、または遺言信託の方法もあります。


 遺言書は元気なうちに作っておくべきです。いざという時は判断能力の衰えや、自分の財産を調べることが億劫になったり、または身体的問題で字が書きづらいなどの状況が予想されるからです。退職した時、きりの良い年齢に達した時に、家族のことを想い遺言書を作ってみては如何ですか?遺言書ではありませんが、エンディングノートを残す方も最近増えてきているようです。


遺言の方式① 自筆証書遺言

自筆証書遺言は全文、及び日付、氏名を自書し押印しなければなりません。押印は認印でも有効ですが、実印の方が良いでしょう、日付は”XX年X月吉日”としないよう注意が必要です。下記遺言の方式②③のような証人は不要ですが、全文自筆なので書き損じや訂正方法の間違いが起きやすく実際の作成は難儀なものです。そして、見つけにくい場所に保管することは避けましょう。(発見されなかったら遺言書の意味がなくなります) 

被相続人の死亡後、その相続人が自筆証書遺言を発見したとき、封書に封印している場合は封印を解かず、そのまま家庭裁判所へ検認の申し立てをしなければなりません。(検認は遺言の有効性をチェックするだけで遺言内容のチェックではありません) そのため遺言を執行するには約1か月ほどかかります。また、本当に自筆かどうかの筆跡鑑定でもめるケースがあり、遺言書の筆跡鑑定用に、全く別目的の自筆手紙などを残しておいた方が無難でしょう。

尚、平成30年の相続法改正、平成31年1月13日施行により、自筆証書遺言の財産目録は別紙として、自筆でなくパソコンなどで作成が可能となり、かなり楽になりました。また、不動産の登記事項証明コピーや金融機関の通帳コピーの別紙でも可能にです。(別紙財産目録の全ページに署名・押印が必要)

加えて、法務局での自筆証書遺言の保管制度が令和2年7月10日より施行されますので、紛失や発見されないという事態が回避でき、より確実になります。

もう一言加えると、よく「無効な遺言」や「遺言が無効になる」という表現がインターネットのあちこちで散見できます。無効であっても、それが故人の意志だと相続人全員が認めるのであれば、無効になった遺言の内容に沿って遺産分割協議書を作成すれば故人の意志は有効に実現できます。

遺言の方式② 公正証書遺言

事前に遺言内容を決め公証人と打合せを行い、証人(推定相続人やその配偶者、直系血族以外の者)2名の立ち合いのもと、公証人が遺言書の内容を読み上げ、遺言者、公証人、証人全員が署名・押印し、原本は公証役場に保管されます。家庭裁判所による検認は不要ですが、公証役場へ数万円(相続財産額による)の手数料がかかります。また、場所は公証役場外の自宅や病院の場合は出張費が加算されます。遺言内容が確実に実現される可能性が高い方式ですが、遺言内容が証人2名が必要で、内容を知られてしまうことになります。

遺言の方式③ 秘密証書遺言

自筆でなくても代筆やパソコンで作成も可能。その遺言書に署名・押印し、公証人と証人2名立ち合いのもと、遺言内容を秘密にしたまま、遺言書に使った印章で封印し、公証人が日付等を記入する。公証役場には遺言したことが記録されるだけで保管はしないので、自筆遺言書同様に紛失や発見されないおそれがあります。公証役場の手数料は財産額に関係なく1万1千円で公正証書遺言より安い。しかし、実際はほとんど利用されていない方式で、病気などで自書が困難な場合や何度も書き換える人にとって有益だと言われています。